Whyの追求が、Howを育てる

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朝出社すると、若手デザイナーの2人がPCの画面を見ながら、なにやら話あっている様子。僕が下手に首をつっこむのも良くないので、さりげなく聞き耳を立ててみました。

どうやら話の中身は、今週予定している撮影業務に関することのようです。

何を撮影するの?

今回の撮影対象は『1950〜1960年代に製造されたレトロアクセサリー(ネックレス)』。

レトロポップなアクセサリー・雑貨は、いつの時代も一定の需要があるアイテムですが、最近は朝ドラで広瀬すずちゃんが着用していたり、USJに遊びにいく若い女の子たちのファッションコーデに使われたりと、露出が一気に増えたと思います。

ちなみにUSJには古き良きアメリカを舞台にしたエリアがあって、そこが「撮影映え」するということで、レトロファッションに身をつつんだ女の子たちで溢れているのです。SNS時代ならではの楽しみ方ですね。

何を伝えたいの?

さて、話を戻しましょう。

デザイナーたちが話していたのは「どんな髪型で撮影しようか?」という話題でした。

今回の撮影は、デザイナーの栗田がモデルを演じ、スタイリングと撮影を西森が担当することになっている、いわば若手2人による初めての撮影プロジェクト。

衣装、髪型、メイクなどのコーディネートまでトータルディレクションできるチャンスは滅多になく、おしゃれ大好きな2人のテンションも高まっているようです。

ネットで1950年代の髪型を調べながら、西森がつぶやきました。

「髪型、こんな感じでどうかなぁ?」

僕のデスクからは彼女たちが見ている画面が見えず、それがどんな髪型だったのかわかりませんでしたが、たまたま2人の近くを通りかかったアートディレクター八木が一言、彼女たちにこのような声をかけました。

「それって、ちゃんと目的を意識したコーディネートなの?」

うーん、的確なご指摘!

ディテールを迂闊に判断するべからず

のちに確認したところ、西森がピックアップした髪型は「The 1950年代!」という感じのロカビリーな髪型でした。

この髪型であれば、たしかに当時の雰囲気は出ることでしょう。でも、それだと髪型の印象が強くなりすぎて、肝心のアクセサリー(ネックレス)の存在感が弱まってしまう可能性があります。

髪型に限った話ではありません。ファッションも、メイクも同じです。

  • かわいい? かわいくない?
  • かっこいい? かっこわるい?
  • 好き? 嫌い?
  • ◯◯っぽい? ◯◯っぽくない?
個人の趣味趣向に偏りがちな選択や、あるいは「べき論」だけで迂闊にディテールを決めてしまうと、オシャレだけど心が動かないという、何とも残念な仕事になってしまいます。まさに「オシャレなデザインでは売れません(僕の大嫌いなフレーズ!)」を体現することになってしまうのです。

Howよりも先にWhyを考えよう

どんな仕事でも、5W1Hを意識することが重要です。

  • When(いつ)
  • Where (どこで)
  • Who(誰が)
  • What(何を)
  • Why(なぜ)
  • How(どのように)

5W1Hをもれなく考えればOKかって?

いいえ、そんなに単純な話ではありません。考える順序を間違えてしまうと仕事に一貫性がなくなってしまいます。

若いデザイナーたちは往々にして、What(何を)からスタートして、いきなりHow(どのように)を考えだします。たしかにHowのパートはデザイナーの仕事の醍醐味かもしれません。己の技術と表現力を存分に発揮できるのですから。でも残念ながら、それでは結果に繋がらないのです。

Whyの追求が、Howを育てる

今回の話を整理しましょう。

若い彼女たちは、Whatの次にHowを考えます。

    若手の頭の中は・・

  1. What(何を):
    1950年代のレトロアクセサリーの商品ページ用のイメージ写真を
  2. How(どのように):
    当時のコーディネートを現代風にアレンジして、とにかくオシャレなスタイリングで撮影する
しかし、アートディレクター八木の思考回路は違います。

    ベテランの頭の中は・・

  1. What(何を):
    1950年代のレトロアクセサリーの商品ページ用のイメージ写真を
  2. Why(なぜ):
    在庫をとにかく早く捌きたいが、物撮りだけは情緒的な価値が伝わりにくいから
  3. How(どのように):
    1950年代の雰囲気を伝えつつ、思わず首元に視線が集まるようなスタイリングで撮影する

そう、Howよりも先にWhyがあります。

どんな仕事でもなぜ?を最低3回以上繰り返して、課題の本質にたどり着くことが超重要です。

ベテランはWhyを追求しているからHowが具体的になる。だからクライアントやエンドユーザーの共感を生み出すことができるのです。デザインの目的は課題解決であるという心得が、きちんと心と体に染み付いているのでしょう。

スターズデザインの若手デザイナーたちは、こういった指摘を受けながら日々成長していくのです。

2019.09.11

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