吉本問題のイシューを特定してみる
この記事を書いた人
1976年 静岡県生まれ。CEO、ブランドマネージャー、ディレクター、コピーライター、日曜エンジニアと5足のわらじで活動中。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会『ブランドマネージャー1級資格』保有者。
テレビをつければ、連日のように宮迫博之氏(以下:宮迫さん)田村亮氏(以下:亮くん)と、吉本興業(以下:吉本)の熱戦が繰り広げられていますね。
今朝の『スッキリ(NTV系)』では参院選のニュースよりも先にこのニュースを報じているわけですから、国民の関心事っていうのは政治よりも芸能ゴシップなんですね。なんだかなぁと思いますが。
イシューを特定しないから、ややこしくなる
ところでこの吉本問題の報道やネットのコメントを見ていると、イシューを押さえた議論をすることが本当に大事だと感じます。イシューを押さえた議論とは、すなわち「いま、何について論じているのか?」を常に見極めて、ゴールに向かって進んでいく議論のことです。
今回の吉本問題について、コメンテイターや芸人仲間、そして僕の周りの人々の話を聞いていると、イシューを見失っている人がとても多いような気がします。論点がブレまくりで、まるで「ダメな会社の会議」を見ているかのようです。個々の論点について決着をつけないまま、複数の論点を同時に語ろうとしているから、話がややこしくなるのです。
吉本騒動のイシューを整理しよう
個人的な分析ですが、今回の吉本騒動の論点は以下の7点に分かれているように見えます。ひとつの騒動にこれだけの論点が詰まっているのも面白いですね。
- 闇営業の是非について
- 反社会勢力からの金品受領の是非について
- 虚偽説明の是非について
- 謝罪のタイミングについて
- 会社の落ち度について
- パワハラの是非について
- 処分撤回の是非について
それぞれの論点ごとに、結論を導いていく必要があると思います。
自分なりに善悪を考えてみた
ロジカルシンキングのトレーニングついでに、今回の問題を自分なりに考えてみました。
- 闇営業は問題ないが、反社会勢力からの金品受領はアウト。宮迫さんと亮くん、その他の芸人たちの謹慎処分は妥当。100歩譲ってもこの処分を覆すことはありえない。無期限謹慎が厳しいかどうかは内規の問題なので議論するところではない。
- 虚偽説明は会社に甚大な迷惑をかけた行為であり、その中心となった宮迫さん・入江氏の処分が重くなるのも妥当。芸能界引退はちょっと厳しい気がするが、契約解除までならまぁおかしくない。
- 吉本が芸人側の謝罪会見開催を認めなかった(静観した)点についてはそれぞれの考え方や言い分があるので、単純に善悪を分けることはできない。
- 上記のように双方の言い分があるならば、謝罪会見強行による宮迫さんと亮くんへの契約解消処分については一方的であり正当性は疑わしい。
- パワハラ発言は論外。このご時世において許されるわけがない。ただし芸人側の処罰とは切り分けて考えるべきである。芸人を厳正に処罰したうえで、経営陣自身も社内規程に従って厳しく処分されるべきである。
・・こんなところでしょうか。
経営陣の退陣を求める声、みたいなのは自由にバチバチやってもらいたいです。移るも残るも自由だと思うので…(在京在阪のキー局が吉本の株持ってるらしいのdr、その後の圧力や忖度への対策は重要ですが、それは別問題ですね…テレビ業界って怖い)。
異論反論あるかもしれませんが、何かを考えるときに大切なのは「イシューを見極めること」だと思います。
今回、ダウンタウンの松本さん、明石家さんまさん、加藤浩次さんといった吉本所属の大物はもちろん、ビートたけしさんや爆笑問題のふたりといった他事務所の大物たちまでメディアを通じてイシューを特定しないで持論を発信したものだから、本質が見えにくくなっているように思います。
たとえば「契約書がないのが問題だ」とか「売れない芸人の生活を保障しろ」とかそういう指摘については、感情的には理解できるのですが、法律上の落ち度はなく(口頭や慣例でも契約は成立する)、芸人の生活保障についてはビジネスモデルに口を出しているようなもので、まったく別次元の話だと思うのです。
2019/7/24 追記:契約書がない件について公正取引委員会から「契約書面が存在しないということは、競争政策の観点から問題がある」との見解が発表されました。
インターネットを通じて膨大な量の情報や、不特定多数の意見に触れることができる時代だからこそ、「いま、何について論じているのか?」を常に見極めていく必要が重要だと思います。