町のスーパーマーケットがカレー専門店を経営する理由
この記事を書いた人
1976年 静岡県生まれ。CEO、ブランドマネージャー、ディレクター、コピーライター、日曜エンジニアと5足のわらじで活動中。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会『ブランドマネージャー1級資格』保有者。
ひさしぶりに終日OFF。
地元藤枝で最近話題のカレー専門店『E→F CURRY』に行ってきました。
サードウェーブな雰囲気が漂うおしゃれな外観。もちろん店内もスタイリッシュ。メニュー1冊とっても世界観が統一されています。
デザイン屋の僕らからみても、「これはきっと優秀なブレーンがいるのだろう」とすぐにわかります。
最近はこういうおしゃれなお店が本当に増えました。いや、ただおしゃれなだけではありません。コンセプトを研ぎ澄まして世界観を伝えるお店が増えてきているといえます。
たとえば同じ藤枝市内なら、抹茶ジェラートで有名な『ななや』さんもコンセプトを明確にして大成功した例ですね。老若男女に愛されるお店作りではなく、(おそらく)1人のペルソナを描いて、ペルソナを満足させる店作りへとシフトしたのでしょう。
スーパーマーケットの新戦略
驚いたのが、このビックリするほどおしゃれなカレー専門店『E→F CURRY』を経営するのが、ローカルなスーパーマーケット・チェーンである『KOマート』さんだということ。
はっきりいって『KOマート』は、何の変哲もない典型的なスーパーマーケット。おしゃれなんて概念は一切ありません。
生活者がこのスーパーに求めるのは、デザイン性ではなく生鮮食品の品ぞろえ。卵1パックがいくらで売り出されるのかが重要なテーマです。
しかし。近年の生活者のライフスタイルの変化や、子育て世代の価値観の変化に柔軟に対応していかなければ、イオンのような大手資本に対抗する術はないと考えたのでしょうか。『KOマート』は新機軸のブランド『KOマート fine』を立ち上げたのです。
『KOマート fine』は、”毎日にプラスしたい「特別」がここにあります” をテーマに、世界の食材やワインなどを取り扱う、いわば食のセレクトショップ。
外観も海外のおしゃれなマーケット然としています。首都圏の人向けに例えると『成城石井の西海岸バージョン』です(伝わるかな…?)
店舗あたりの売上規模はおそらく通常の『KOマート』のほうが高いと推測されますが、なにぶん競争が厳しい。顧客を維持するには利益率を犠牲にする必要があり、宣伝広告費もかさみます。
顧客との繋がりの深さを指標にすると『KOマート fine』のほうが強くなりそうです。ワインを飲む日の買い物は絶対に『KOマート fine』で。こういったマインドシェアを獲得できれば、価格競争にさらされることはありません。
しかしこういった路線のお店は、プロモーションが難しいです。商圏が狭すぎてテレビCMは打ちにくい。ウェブで検索…というイメージもない。若いひとは新聞をとらず、チラシも届かない。
極めて狭い商圏で、食にこだわりが強い人、ワインやチーズにたいして造詣の深い人にアプローチするためには、どうすればよいのでしょうか?
その答えが、『E→F CURRY』にあるのかもしれません。『KOマート fine』で扱っているこだわりの食材をつかった飲食店の展開です。
それ単体で収益化が見込めるばかりか、世界観の共有・伝達といった意味で抜群の宣伝効果があります。
これまで書いたことは、すべて僕の推測にすぎません。それでも本当に面白い事業展開だと感じました。EC事業者にとっても応用が効くかもしれませんね!