【共感ブランディングラボ】架空ECサイトのブランディング体験 vol.1-3
前回のラボ(vol.1)では、ブランド・マネージャー認定協会が提唱する『ブランド構築の8ステップ』のうち、「環境分析による市場機会の発見(前編)」をご紹介しました。今日は後編です。
環境分析による市場機会の発見(後編)
外部環境を整理する(PEST分析)
自社について理解したら、次は「自社をとりまく外部環境」を整理する必要があります。
外部環境を整理するためには、PEST分析というフレームワークを使うことが有効だと学びました。
PEST分析は ①政治的環境要因、②経済的環境要因、③社会的環境要因、④技術的環境要因、この4つで成り立ちます。
それぞれの枠に「自社にとってプラスになる要因」「自社にとってマイナスになる要因」があるので、洗い出していきます。さっそくやってみましょう。
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【政治的環境要因】
- 消費税増税が、自社の事業に影響を及ぼしそうです。
食品は軽減税率が適用されるので、スイーツをネットで買って自宅で食べるという人が増えるかもしれません。 - 増税によって財布のヒモは全体的にかたくなると思います。
「贅沢は敵」という考え方が広がれば、スイーツのような嗜好品は売れなくなります。 - 最近の健康ブームが、自社の事業に影響を及ぼしそうです。
人口添加物などを利用しない、素材重視のスイーツが評価される時代です。 - 運送代が上がり、クール便の価格が上がります。
常温のものが売れやすくなります。 - スマートフォンの普及率が、自社の事業に影響を及ぼしそうです。
いつでもどこでもネットでスイーツを注文できる時代になったので、実店舗がなくても不利になりません。 - 最近はタピオカ専門店のような『特定のスイーツ専門店』が流行っています。
特定のジャンルに特化した売り方は、オーブンなどの設備投資が安くすむため、心強い流れです。 - 流行の移り変わりが激しくなっていることは、専門店にとって大きなリスクです。
- コンビニ店舗の拡大
コンビニスイーツの普及 - スタバやタリーズの普及
カフェ文化の流行により、高い飲み物を買うことに抵抗感のある人が少なくなっている - 近年、パッケージデザインで購入を決める消費者が増えています。
娘がデザイナーで「最近のデザイントレンド」を理解し、作れるのは大きなメリットです。 - スイーツの製造工程を見せ、食の安全を初級する実店舗が増えています。
ECサイトのみで運営するオーナーにとって、これは再現が難しいといえます。 - iphone11の登場(高性能カメラ)
SNSの普及で写真を撮ることに関心のある人が増えている
【経済的環境要因】
【社会的環境要因】
【技術的環境要因】
以上を図に表してみましょう。
だいぶ整理されてきました!
軽減税率によるメリットはプラス要因ですが、おそらく期間限定のことです。
それよりも、スイーツ自体の変化(健康志向、専門店化など)のほうが自社にあたえる影響が大きそうです。
PEST分析は、日頃から政治・経済・社会・技術に目を向けていないと苦労することがわかりました。
共感されるブランドを作るためには、様々な情報に目を向けないといけませんね・・。
市場機会を見つける(3C分析)
続いて、「顧客」「競合」「自社」の3つの関係性から、市場機会(=ブルーオーシャン)を見つけます。
「顧客」については、不満や不安、そこから生まれるニーズを。「競合」と「自社」についてはそれぞれの強みと弱みを書き出し、市場機会を探っていきます。
今回のラボでは、「直接競合」はワカ子さんと同じく森町にある個人経営のとあるケーキ屋Aを対象とし、さらに「間接競合」としてコンビニスイーツまで対象を広げて市場機会を探ってみました。
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【顧客のこと】
- 友達と遊ぶときに持って行ってシェアしたい。
- 特別感が欲しい。
- おしゃれさが欲しい。
- 楽しみたい。
- いつもと違うもの、新しいものが食べたい。
- ワンランク上のものが食べたい(ちょっとした贅沢)。 <不満・不安・不全>
- 実店舗だと閉店時間が早い。
- コンビニスイーツは美味しいけれど特別感がない。
- 有名店のスーツはマンネリ化。
- 遠くまでは買いに行けない。
- 捨てにくい包装は面倒。
- 荷物になるのが嫌だ。
- ひとりで経営しているため希少価値が高い。
- 季節、地元の素材を使っている。
- ジュニア野菜ソムリエの資格を持っている。
- 無添加スイーツの販売。
- EC販売、実店舗もある。 <弱み>
- 大量生産は難しい。
- EC店舗ではホール売りのみ。
- オールシーズンの定番商品が少ない(旬の食材を使うため)。
- パティシエではないため見た目を派手に作ることはできない(しない)。
- コスパが良い(安くて美味しい)。
- 入手が簡単。
- 他のものと一緒に「ついで買い」しやすい。
- 気軽に1個から買える。 <弱み>
- セット売りなし。
- EC店舗なし。
- そもそも洋菓子専門店ではない。
- おしゃれ感、特別感はない。
- 自宅でケーキ教室を開き、講師として活動した経験がある。
- 若い感性を持っている。
- パッケージデザインができるデザイナーの娘がいる。
- お菓子の本場(ドイツ)での修行経験がある。
- 熟練のケーキ職人、腕に自信がある(味だけで勝負できる)。
- 菓子類全般をつくることができる。
- 素材へのこだわりを持ち、目利きに自信がある。
- 大量生産できない分、希少性が高い。 <弱み>
- ブランドが認知されていない。
- パティシエではないため、派手なケーキは作れない。
- ひとり自宅での製造になるため、大量生産は難しい。
- 実店舗がないため作業の様子を実際に見せることはできない。
<ニーズ>
【競合のこと(直接競合:森町のケーキ屋A)】
<強み>
【競合のこと(間接競合:コンビニスイーツ)】
<強み>
【自社のこと】
<強み>
それぞれ書き出してみましたが、なんとなく競合との差別化ができそうですね。
ここで気をつけなければいけないのは、競合と同じ強みで競争することに対するリスクです。
ニーズがあったとしても他店舗にもある強みで戦えば、最終的には価格に優位性を持った方が強くなるため、ワカ子さんのような小さな事業者には不利に働きます。
逆に、ニーズが全くない製品を販売しても自社のひとりよがりとなってしまうため注意が必要です。
今回のブランディングでは「友人と共有したい」「特別感が欲しい」「楽しみたい」という顧客ニーズに対し、競合にはない「ケーキ教室の講師の経験」という強みを活かしたいと思います。
市場機会の仮説は「ケーキ教室のような体験性を持ったECサイトの立ち上げ」と設定しました。
3C分析を図に表すと、このような感じです。
ここまでのまとめ
今回は8あるステップの1段階のみでしたが、これだけでもブランド構築が地道な取り組みなことがわかりました。
特に、自社分析を念入りに行うことが重要に感じました。顧客ニーズや競合の動向を知ることももちろん大切です。しかし、「自分たちが何者であるか」をきちんと把握していないと、PEST分析の要因がプラスなのかマイナスなのか判断できなくなり、市場機会も生み出すことができません。
設定をもとに一貫性を持った分析をすることと、集めた情報をさらに深掘りするのは大変です。
今回は先輩方にアドバイスをいただきながら進められましたが、普段からもう少しニュースを見ておいたほうが、外部環境の洗い出しがスムーズにできるようになると思います。
あと7ステップでワカ子さんのブランドがどう設計されていくのか、お楽しみに!
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