幕の内弁当みたいなデザイン
この記事を書いた人
1976年 静岡県生まれ。CEO、ブランドマネージャー、ディレクター、コピーライター、日曜エンジニアと5足のわらじで活動中。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会『ブランドマネージャー1級資格』保有者。
僕らがやっているデザインという仕事は、「クライアント」の存在があってはじめて成り立つ仕事です。
僕は営業マンとして、時にコンサルタントやディレクターとして、そしてブランドマネージャーとして、様々なクライアントのもとに赴き、コミュニケーションをとっています。
ところで、僕らに仕事の依頼が来るということは、大抵の場合、デザインの力で解決したい「大きな課題」を抱えています。その問題の根っこを見つけ出し、デザインを提案するのが僕らの役目なわけですが、一発でクライアントを納得させられる機会はそこまで多くありません。「物言い」が入るケースも多々あります。
僕らは最高の仕事がしたいだけで、一発OKの快感が欲しいわけではありません。制作物に関するあらゆるフィードバックを歓迎しているのですが、しかし僕らを大きく悩ませるフィードバックもあります。
クライアントは幕の内弁当を作りたがる
僕らを悩ませるフィードバックの代表例は「これも入れてほしい!あれも載せてほしい!」というフィードバックです。
人間の情報識別能力(判断力、記憶力etc.)には限界があるため、たくさんの情報を詰め込んだとしても、個々の情報の伝達力は弱まっていくばかりです。
だからこそ、デザイナーは極限まで情報をそぎ落とし本当に伝えたいことにフォーカスを当てるようにしています。
でも、それがなかなか伝わらない。
きちんと説明して理解してくれるクライアントが半分。もう半分のクライアントは、「いや、でもこれも大事で、あれも大事で・・」というのです。まるで幕の内弁当のようなデザインを求め出すのです。
あなたは幕の内弁当を食べた翌日、その弁当に何が入っていたか覚えているでしょうか。まず覚えていないと思います。情報を詰め込むということは、つまりそういうことです。
担当者は、そのデザイン(制作物)について、最初から『自分ごと』で考えているので、デザインの隅々まで見ることができるのは当然のことです。しかし、エンドユーザーが、担当者と同じ目線でデザインを見ることではできるでしょうか?
エンドユーザーが、そのデザインにどんな印象を抱くかは一瞬の勝負。1〜2秒という瞬間で『自分ごと』だと気づいてもらわなければいけません。それを実現するためには、幕の内弁当のようなデザインではダメだと思います(もちろん、幕の内弁当を求めている人には最高の選択肢ですが)。