デザイナーは神様でも魔法使いでもありません
今日は某サイト用のロケ撮影を行いました。早朝5時に掛川を出発し、県内外のいくつかの撮影ポイント(豊川、湖西、三ヶ日、浜松市街、掛川)を回り、昼過ぎにはオフィスに戻るという弾丸ツアーです。
これほどのハードな日程を組むことは珍しいのですが、今回は、各ロケポイントで「午前中の柔らかな自然光」を使った撮影をしたかったのです。スケジュール的にも今日しか撮影のチャンスがありませんでした。
仮に、撮影時間が午後になったとしても、画像編集ソフト(Photoshop、Lightroomなど)で加工することで「なんとなく午前風」の写真を作ることもできます。しかし、加工した場合は、どうしても光源の位置と影の向きの関係などの「違和感」が残ってしまうため、今回は弾丸ツアーで撮影するという選択肢を選びました。
デザイナーは魔法使いではない
僕たちはweb用の写真素材1点に対しても神経を使っているのですが、一方で、世の中には『デザイナーは魔法使い。どんな写真でも自由自在に加工できるから、手持ちの写真をとりあえず渡しておけばOK!』そう考えているクライアントも存在します。
「写真に映っている車を消してください。」
「この人の服装を変えてください。」
ー 簡単に言わないでください!(悲鳴)
「横向きの人を、正面に向かせてください。」
「濁りきった川の水を、透明にしてください。」
ー それは無理です!(絶叫)
顔のシワを減らす、空に映った電線を消す、服についた糸クズを取るといった程度は問題ありませんが、元の写真に存在しない景色を表現したり、そもそもピントがあっていない写真をクリアに見せたり・・といった要求の対応は困難です。
実在しない景色や物体を表現することは、写真の「補正」や「加工」という枠を超えた、もはや「創造」の領域です。
僕たちは神様でも魔法使いでもありません。
目的と程度を理解する
ただし、難しいと思える要求も、時間をかけることで対応できる可能性もありますし、品質を求めなければ(合成などの手法を使いつつ)対応できることもあります。
こちらのwebサイトは弊社の制作事例です。
まるで『中世の魔女の家』を彷彿させるこの建物。実はよく晴れた日に撮影した写真です。ベースの写真に曇り空を合成し、さらにパラメータを調整することで、いまにも稲妻が走り出しそうな天候を作り出しています。
プロ目線で見れば(この合成について)若干の違和感はあるのでしょうが、イメージ戦略として『世界観の表現』が重要だったことと、技術的な課題が少なかったことで、挑戦するに値した事例だと思っています。
何が出来て、何が出来ないかは、一般の人には判断が難しいと思います。そこで、僕たちデザイン会社が気をつけなければいけないことは、クライアントが求めている作業の目的と程度をきちんとヒアリングすることです。
予算をかけて実施する価値があるか、ユーザーに誤解や損失を与えないか、他者の肖像権や著作権を侵害しないか、撮影し直すという選択肢はないか・・などを判断した上で、ケースバイケースで適切な提案を心がけたいものです。